ここから一番遠い海

夢日記,昔話

ライオンのように訪れ、子羊のように去る

3月は寒くてどんより曇り空で、地震で図書館も新幹線もIKEAもすべてぐちゃぐちゃになり、震災の記憶もありで、気持ちがめちゃくちゃなままに始まった。「March comes in like a lion」ということわざがぴったりだった。羽海野チカの「3月のライオン」で知ったきりで、正確な意味を覚えていなかったため調べてみると、どうも「せわしさ」のことじゃなくて「不安定な天候」のことをして"Lion(獅子)"。と言っているみたいだった。しかも、なんと続きがあった。

March “comes in like a lion and goes out like a lamb” means that the weather is very cold at the beginning part of the month of March but the weather is warmer at the end of the month.

 

gose out like a lamb(子羊のように去る) 、か。

3月を「年度末(fisical year end)」に据えているこの国では、始めから終わりまで3月は獅子でしかないけど、あたたかな春への移行を「子羊のように去る」と言わしめる感覚ってなかなか素敵だ。

 

4月に入ってにわかに忙しくなってきた。

「10年位前の自分が望んできたものをだいたい手に入れることができたな」ということに突如気づく。忙しくも充実した日々を送っている中で。

10代から20代の前半にかけて、失恋でぐちゃぐちゃになったり、家族の間のこまごましたいざこざや、友人だと思っていた人との関係に生じた大きな変化など、ささやかで珍しくもないがそれなりに消耗するいろいろなことがあった。

でも、最近では、そういう出来事もあまりなくて、体が焼けこげそうなくらいの羨望や嫉妬や劣等感、誰かへの怒り、許せないという恨みや、漠然とした将来への不安感を感じることがとても減った。素敵な人たちのいる穏やかな場所10年ほどかけてようやく馴染むことができたのがとてもうれしい。

人にうらやましがられるほどの家に住んでいるわけでもないし、仕事で世間に大注目されるような成果があるわけでもなければ、ものすごく財産があるわけでもなく、かわいい子供やきらびやかな恋人・結婚相手がいるわけでもない。

そういう、わかりやすい「幸せのシンボル」はないけど、毎日とても穏やかで幸せだ。

体が健康であり、食べ物に困らず、友人や家族が精神的にも肉体的にも元気であること、理解のある上司に囲まれていること、お金に困っていないこと。すべて、喉から手が出るほど望んでいても手に入れられなかった時期があるものだ。

 

「ライオンのように訪れ、子羊のように去っていった」とは3月という短いこの季節じゃなくて自分の10代、20代のことだった。

30代は子羊と獅子の同居した、穏やかで力強い季節にしていきたいな、と思ったりする。