ここから一番遠い海

夢日記,昔話

日記:稲荷ずしを作る

(2021.07.06)

いっぺんにたくさん炊いて保存していた白米が全く消化できないでいたので稲荷ずしを作ることにした.

 

本当は炊き立てのご飯で酢飯を作ったほうがいいんだろうけど気にしない.最近は良い世の中だ.かんたん酢なんてものが売っていてこれをご飯に混ぜればそれこそ簡単に酢飯ができあがる.

 

薄く輪切りにしたきゅうりに塩をふってよく絞る.ピンク色の新ショウガは薄切りにしておく.2合分のご飯をレンジで温めてかんたん酢を加えて混ぜる.あらかた混ざったところで塩もみしたきゅうりとピンク色のショウガを混ぜる.

 

高名な女性の大御所料理研究家が酢飯に塩もみしたキュウリを混ぜ合わせたものを「キュウリの寿司」と紹介していた.その潔さが私は好きなのだ.
刺身なんてなくたって寿司は成立するのです. 

混ぜ合わさった酢飯をあまじょっぱいいなりに詰め込む.これは市販品.


これが私の作るテキトー稲荷ずし.

 

いつも家でする料理は,私が私だけのためにするものなので理論的にはすべて自分の好みの味つけになるわけなのだがこれがそうもいかない.

でもこの稲荷ずしはよっぽどご飯の炊き方を間違えたりしていない限りちゃんと美味しくできる.

 

酢のものを食べているとおばあちゃんを思い出す.
遠い昔すごく遠くから北海道に嫁いできたおばあちゃん.
私が北海道を出るとき暑い夏に耐えられるかどうかを一番心配してくれたおばあちゃん.
おばあちゃんは夏に食欲が消えてしまったら酢のものを食べるんだよと電話越しに教えてくれた.

東京の暮らしがつらくてたまらなかった夏のことだ.
おばあちゃんがお嫁に来た時代にはたぶん電話なんてなかった.

 

東京の夏を何とかしのげたその年の秋に私は会社を辞めて今の職業に就いた.

何が、と言われると具体的に答えることができないのだが、何か色々なことがおばあちゃんのおかげで前に進んだような気もするのだ.

私が会社を辞めて3か月たった時おばあちゃんは急に具合が悪くなって亡くなってしまった.
もっと孝行したかった.
おばあちゃんはありとあらゆることで私のことを気にかけて手紙をくれていたりしたのに、一人暮らしを始めたばかりのころはまったく返事もせず友達や恋人と遊んでばかりだった.
自分のことを愛してくれていた人のその愛情に報いることのなかった幼稚な自分を思い出して胸がすこし苦しい.
それは今でも変わらない.

そんな風に稲荷ずしを作るたびにいろんなことを考えてる.

 

明日のお弁当は稲荷ずしだ.