ここから一番遠い海

夢日記,昔話

世界が明日もし終わるなら

100万円あったら何をする?とか、死ぬ前になんでも好きなものを食べるとしたら何を食べたい?、みたいな、答えによって自分の人間性を推し測られそうな、浮世離れした質問をされると、変なところで真面目な性分が災いして、体がしばし硬直する。でも、「世界が明日もし終わるならどうする?」という質問だけは別で、「背中にタトゥーを入れる」と即答できる。羽の絵を入れるのだ、天使の羽の。

 

コットンとかリネンの黒いワンピースが似合う、チューリップを逆さまにしたような可愛いショートカットのアベさんの背中には羽が生えている。私のことをずっと可愛がってくれている同じマンションに住む年上の女性だ。

「夜には背中に生えた羽を見せてくれたマリ」という何処か清くも艶かしいスピッツの歌詞を聞いた時と同じような言い様のない昂りをおぼえて、その時から背中に羽を生やすことに惹きつけられてやまない。

 

明日世界が終わるなら、もう温泉に行けなくなる心配も、体裁を取り繕ったりする必要も、長い?人生の中でいつか後悔する日が来たらどうしようという不安も必要ない。天国みたいな場所があるならどうかそこに行けますようにと願って背中に生やした羽と共に眠るだけだ。

 

これが、私の考える世界の終わりへのカウンターパンチ、一番かっこよくてロマンチックな回答だ。