体が震えてしまうくらいさみしい記憶と手や足の凍える感覚が一緒について回っている
「寂しくて寒くて貧しくからっぽのぼろいアパートに一人でいると
どうしようもない男であっても温まりがあるだけましに思えてしまう」
西原理恵子がそんなことを述べていた気がする
寂しさと寒さと貧しさは一緒くたにやってくる
寂しくなると途端に貧しくなって寒くなることもないし
貧しいからといって寂しさばかりがあるわけでもないし
寒いからと言ってすぐさま寂しさと貧しさに見舞われるわけでもない
でも、三つはものすごく強固に結びついている気がする
私が9年前住んでいた部屋もものすごく寒かった
ぼろ屋につきものの隙間から容赦なく冷気がしみ込んできた
そんな部屋に一生懸命住んでいたのはやっぱりお金がなかったからだったし
そんな状況からくるみじめさでいつもさみしかった
そのせいなのかよくわからないけど決して自分の寂しさを埋めてくれないような
無責任でか弱くて甘ったれたかわいい男の子と付き合ったりしていた
彼は私との約束をよく破った
泣き疲れた私が冷たくなる鼻と一緒に眠りに落ちたずっとあと、そっとボロアパートにやってきて布団に滑り込んできた
許しを請うようにぴったりくっつけてきた手とつま先の、芯から冷え切った凍えるような冷たさがもう9年もたつのに忘れられない
どんなふうに夜を過ごしたのか、どんな言葉を交わしたか、他のことはすべてすこしずつ忘れていけているのに
温かい部屋に住むようになった今すべては寂しい夢の中で起きた出来事のようだ
彼とは誰よりも長く時間を過ごして、自分の裸だって見せて、
一緒に定食を食べたり遠出をしたりしたのに結局いつもさみしかった
各々別のもののはずなのに私にとって三つが一緒くたのものなのはそういう記憶のせいだ