人に優しくしてもらってどうにかどうにか、滅茶滅茶な気分を乗り越えられたこと、救われたことを普段忘れてる。
普段そんなことがあったなんて全く忘れているし、これまでもこれからも心身ともに健やかに涙なんて流さず生きている気がするけど。
たまにハッと思い出すのが、21歳の夜中、自分以外誰もお客さんのいない美容室で泣いてしまったときそっとティッシュを渡してくれた美容師さんのことだ。
散髪代を浮かせたいという、貧乏くさい学生じみた発想でカットモデルを募集している美容室の噂を嗅ぎつけてそこを見つけた。
どう言う文脈でそのことを話し出したのわからないけど、ずっと友人だと思ってた人と心が通わなくなり、一方的に絶縁を言い渡されたことをポツリポツリとその美容師さんに語るうち、感情が昂って涙が出てきてしまった。
自分ばかりが悪者にされている理不尽さ、ずっと友人だと心から信じていた人達に裏切られた悔しさ、反撃や喧嘩も許してもらえず一方的に絶縁されたことへの怒りと惨めさでぐちゃぐちゃだった。
涙をボロボロ流す私にそっとティッシュを差し出してくれた美容師さんのあたたかな寂しい眼差しが忘れられない。
もう大人になってそういうみじめな日があったことを少しずつ忘れていきそうになるけど、たまにあの日めちゃくちゃな気持ちだった私やそれを助けてくれたあの人たちを思い出しては、謙虚に生きていたい、と思ったりする。