職場のイベントで祝花が大量に届いた。イベントが終わって、好きなだけもってかえって良いとの通達が出て、めいめいが思い思いの花束を作り出す。
せっかくのバラの花を茎の部分からぽきっと折ってしまった男性が西の訛りの混じる口調でもったいないことをした、とつぶやき、頭だけになったバラをそっとスーツの胸ポケットに差していた。その姿がなんだかハッとするくらいキレイで、思わず声をかけると花なんて良さがよくわからないとまた、西の訛りで、でも少し浮かれた声色で返事が来た。
やっぱり花っていいな。ただ咲いている。それだけでこんなに美しいし、人の気持ちに何か明るいものを灯してくれる。
たくさんのユリやバラやカーネーションのなかに何故か一輪だけそっと具合の悪そうな紫陽花があって、それを家に持ち帰った。
自宅で徐々にひからびていった紫陽花は、今、白くて小さな蝶がか弱く群れを作って、そっと一休みしているみたいだ。