ここから一番遠い海

夢日記,昔話

孤独と美しさ

自分が何者でもなくてどこにも居場所がないせいで物事が一層綺麗に見えていた時期があった

 

私はその時学生で恋人がいなくて、家族と離れて暮らしていて、お金がなく、ただ持て余すばかりの時間があった

何かを成し遂げようと一生懸命なのに、毎日何も成し遂げられず、ずっと足踏みをして同じ場所にいるような気分で日々を過ごしていた。

 

正気を保とうと、松浦弥太郎の本を読んだり、星野道夫の写真を見たり、村上春樹のエッセイに触れたり、ジョンコルトレーンのアルバムを聴いたりしてどうにか毎日をやり過ごしていた

 

それぞれ美しかった

手の届かないところにある景色、人、言葉、それら全てが手が届かない故に一層美しかった

 

いつも何かを見上げている気分だった

 

空港にいる時の気分に似ている。

自分は漂流している小瓶

それに比べて、遠い異国から来た人たちや、これから遠い異国に向かおうと微笑んでいる人たちが、きちんと自分の居場所を持っている、自分とは違う特別な人間に見えて眩しく美しかった