ここから一番遠い海

夢日記,昔話

さようなら執着

この間寒さと貧しさに飢えていたころの記事を書いてから、ずっと手放すことのできなかった昔の恋人への執着のような何かが勝手に消えていった。消した、のではなく、向こうから、勝手に、消えていった。

「忘れたい」「記憶から消したい」「早くどうとも思わないようになりたい」とそう思っているうちは、永遠に忘れられないんじゃないかというくらいに根を張ってたのに。

あんまり私の心に居座り続けるものだから、彼と別れてしまったことで人生が取り返しのつかない欠落のあるものになってしまったんじゃないかと夢にうなされるほどだった。

 

やっと楽になれた。こんなことってあるんだな。

 

寒かった記憶、惨めだった記憶、貧しかった記憶を思い出していくうちに、彼と一緒にいることでどれだけ自分が傷つけられ、損なわれ、乏しめられたのか、はっきり蘇ってきた。彼にそんな意図はもちろんなかったと思うけれど。

 

終わってしまった恋、失恋というとどうも甘美な響きがあった。甘美な響きに自分を甘やかして忘れていたけど当時の私は全然幸せではなかった。やっと思い出せた。

その瞬間、あれだけ強く強く私にしがみつき根を下ろしていたい執着は、居心地悪そうにすっとどこかへ消えた。

 

年は取るもんだし文章は書くもんですね。

 

さようなら執着。