ここから一番遠い海

夢日記,昔話

10年革命

学生の時、車に乗るお金も、古びた旅館に泊まるお金もなくて、親から送ってもらっている仕送りやバイト代を足し合わせてようやく買った、10万かそこらの原付に乗って、その友達と2人、大型トラックや先を急ぐ小型車なんかにあおられながらよろよろとその町にやってきたのが5年前。

生身の体をさらす原付って乗り物の定めか、秋の始まりだったけど復路ですっかり体が冷えきってしまい、「温泉に入った意味ないね」とかなんとか言いながら、二人、夜の繁華街で博多とんこつラーメンを食べたことをめちゃくちゃ強烈におぼえている。温泉がどんなだったかは全く覚えていないのに。

 

私は長いこと、「私たちって仲良しだよね?」「親友だよね?」と確かめ合うような女の子同士の人間関係が苦手で、そういう暑苦しくて稚拙で近すぎる距離感を友情や親愛の証と勘違いしている高校の同級生との人間関係が息苦しくてしょうがなかった。

 

それに対して、互いにちょうどよい距離で互いのことをほんのり大切に思い会えている彼女との関係は10年ほどかかった私の革命の財産なのだ。

 

その土地でしか買えない豆腐なんかを買ったり、宿が支度してくれる晩御飯や朝ごはんを食べすぎたりしているうちにあっという間に2日間終わってしまった。

 

遠い街に住んでる彼女と解散するとき、本当は、最近ちょっと元気がない彼女を抱きしめたかったけど、なんとなく気恥ずかしくて、横に並んで背中をポンポンとたたいた。10年革命の結果、私は人との身体的距離を自然に縮めるのが若干苦手だ。そういう私のダサさを知ってか知らずか、「不器用だな~」と笑われる。改札に消えていくのを見送らずくるっと背を向けて解散する。

 

いい友達を持ったな。