ここから一番遠い海

夢日記,昔話

共通テスト・シアトル・学位論文

気づいたら二月になっててびっくりした。

1月って大学で学生さんたちと向き合ってると、大学受験生たちの対応だったり、学位論文の追い込みにあれやこれやと気を揉んだり厳しい言葉や優しい言葉を緩急つけて投げかけたり、若者の人生を左右しかねない大切な締切や事務手続きに関する伝言ゲームをうまくやりこなそうとしたりしなくちゃならなくて、目が回りそうなくらい忙しかった。

 

共通テストの試験監督をしていた一日、大きな教室全体でたくさんの若者がいるのにそこは本当に静かだった。彼らのためにポカリスエットのCMみたいなBGMが鳴ることもなければ、試験用紙へ咆哮するものもいない。深海のような静けさの中、自分が受験生だった時のこと、合格発表に涙したこと、その2日後に大きな地震が起きて津波でたくさんの人が死んだことを思ったりした。時の流れは残酷だ、と思わない。当時の私と同じ年の若者たちの紅潮した頬や試験用紙に刮目する様子から、時が流れていくということの有り難さというか美しさみたいなのを勝手に感じてちょっと、なんでか、涙が出そうになった。

 

試験監督を終えると、ずいぶん昔、まだ私が大学の四年生だった頃、父親とも兄とも先輩とも違う独特の優しい、でも優しさと感じさせないひょうきんさでもって、私の行く末を照らしてくれた先生が新幹線で行けるくらいの距離の大学で教授になったと言うニュースが飛び込んできた。めでたい!

 

そんな嬉しいニュースのちょっと前に、シアトルにまた行くことができたりもした。孤独で尖った博士の学生だった時、単身ふらりと訪れた私をあたたかく受け入れてくれた海辺の街。

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体が震えるくらいいろんなことが不安で孤独だった時、そう言う気持ちに反するみたいに人に距離を縮められるのが苦手だった。シアトルで出会ったおせっかいで優しくてずかずかと人を色々なところに連れ回すルームメイトに、「案外人との距離ってこれくらい近くてもいやじゃないものなんだな」と、納得しちゃったのだった。

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彼女と彼女の愛犬にまた会えて言葉にできないくらい、嬉しかった。

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年末はかなり暗澹とした気持ちでいたけど、年が明けていろんな人と出会って、学生たちに手を焼いたり一緒に喜んだりしてるうちにそう言う鬱々とした気持ちが少しずつ小さくなっていった。一月、楽しかった。