ここから一番遠い海

夢日記,昔話

クリスマス・縦列駐車・貧しい耳たぶ

好きな男の子の昔の恋人の話を聞いて自爆したため早々に床について体力を回復させてクリスマスを迎える作戦を立てた。

が、頭が痛くて寝付けない。色々なことがあったからな。そして、何より、部屋が寒いから。

 

寒いのは良くない。寒いのは寂しさやみじめさ、貧しさと直結した感覚だから

ストーブを少しだけ焚いて眠る。

 

目が覚めると雪の朝だ。雪は良い。白くて静かだ。

街の空気に漂うよくないものをそっと吸収し、再び浮遊しないよう、地上に薄くとどまらせてくれているように見える。

 

いつもバイクに乗っている好きな男の子のことを考える。

こんな雪が降ってちゃバイクなんて乗れないよね。

週末は雪が降るらしいですよ、と、帰る前にわざわざ私に伝えに来てくれたことを思い出して、胸がすぼまるような踊るような気持ちになる。

そして、好きな男の子のことばかり考えてることに情けなくなる。もっと他のことに脳みそを使いたい。

 

自動車学校に行き、縦列駐車のやり方を習う。自動車学校には運転の仕方を習いに行ってるのに、私はいつも何処かで諦めてる。

どんなに必死にあがいてもできない時はできないし、できる時はできるのだ。

世の中にはそういうことがいくつかある。村上春樹が言ってた。目に見えない何か。

そういう言い訳じみた態度が功を奏したのかわからないけど、割合スムーズな縦列駐車を決めて教習が終わった。

29歳のクリスマス、私は縦列駐車を習得する。

 

夕方、大学時代の友人5人と赤ちょうちんの灯る焼き鳥屋に集まった。

ビールを飲んで、塩のふってある鶏レバーを食べてると、向かいに座ってた男友達にじっと顔を見つめられた。

なんだ、なんだ、と訝しんでると突然「耳たぶ全然ないね」と言われる。えっ、と周りを見渡すと、確かに私以外の全員私よりも耳たぶが大きい。

急に恥ずかしくなる。私の耳たぶはどうやら平均よりだいぶ小さいらしいと知る。

耳たぶが小さいと指摘されると恥ずかしくなるということも知る。

 

いつもと同じような話をする。

「私子供嫌いなんだよね、うるさいから」と一人が言った。私は彼女のそういう素直なところが好きなだ。子供や赤ちゃんをみてはかわいいと黄色い声をあげる人が必ずしも子供にとって良い大人じゃないって知ってる。言動の一致しない人たち。そういう人より彼女はずっと誠実で優しい。そして多分、子供にとって良い大人だ。

 

ほろ酔い気分でイルミネーションを見ながら雪道を帰宅する。

家に泊めた友人が深夜突然ケーキを買いに行こうとするのを必死で止めて風呂に入らせる。

部屋を暖かくして床につく。

 

良いクリスマスだったな。

 

おやすみなさい。