ここから一番遠い海

夢日記,昔話

夢の話・とんかつの裏表

朗らかで快活に笑う優しい大食漢こと、恩師の一人がとんかつについてもの申している。

 

大学院生の時、半年分の学費を払ったら通帳の残高が3000円になってしまったことがあった。半額免除申請が通って、普通の半分の額でよかったはずなのに。いたいけな大学院生に容赦なく襲い掛かる国民健康保険料や年金、もろもろの税金やらで常にお金がなかったのにとどめが刺された形だ。
その時、何とか食いつないでいけたのは、その穏やかな大食漢が雇ってくれたくだらない大学内のアルバイトのおかげだった。大きなスクリーンの前で、3D眼鏡をかけエフェクトのかかった動画を見て感想をアンケートに記入すると1000円分のクオカードがもらえた。でも、その「くだらん作業」とやらの対価としてもらっていた3枚のクオカードのおかげでお米を買い次の月の給料日まで食いつなぐことができたのだった。

ご飯を食べるのに困ったことがある人、人間関係や学業で大きな挫折を味わった人特有の奥深いやさしさのあるその恩師に私はなんだかんだ言ってずっと助けられてきた。

 

その恩師が、神妙な面持ちで最近のとんかつ屋がなっていない、と語っている。とんかつには「裏・表」というものがあり、本来お客さんに供されるとき、「表」がきちんと「表」になっているべきなのに、最近のとんかつ屋ではとんかつの「裏」が「表」になって提供されることが多い。そのことが実に、嘆かわしい、と。

 

はあ、とんかつの表裏って、あの、サクサクのほうの面が表ってことですかね?衣がちょっとふやけているほうが裏ですか。カレイとかヒラメといっしょで見分け方があるんですね。

 

とかなんとか適当に調子を合わせて、最近のとんかつ屋の体たらくを一緒に嘆いていたら、いつの間にかまどろみから目が覚めた。