ここから一番遠い海

夢日記,昔話

夢の話:好きな子の温度

料理を取ろうと伸ばした私の腕に交差するようににょきっと腕が伸びてきて、腕の主である、好きな男の子がちょっと体制を崩したほんのわずかな時間に、私の手の甲に彼の腋が当たってしまう。ほんのわずかなわずかな時間のことだったのに彼の腋のほの温かさが、手の甲を渡って脳みその奥の奥まで焼き付いて離れない。

飲み会の間中、狭い卓を囲んでる隣席の彼の肩がずっと私に触れてきて、その肩の優しい暖かさと、腋の生暖かさの両方が妙に艶かしくて寝つきが悪かった。

 

そんな自分の狂った恋心のせいで好きな男の子の夢を見る。

私も彼も大きなソファのようなところで、雑魚寝をしている。手とか足の一部が彼に触れてる。寝ぼけているふりをして彼にそっと彼に抱きつく。花びらの一枚一枚をほどく時のようにゆっくりと一つ一つの所作を確かめながら、でも寝ぼけてるふりをして、彼を抱きしめると、彼がそれに呼応するように抱きしめてくれて体が暖かくなる。手の甲や肩を通じて感じたあの、生身の暖かさを全身で感じる。

でも、寝たふりをやめてふと顔を見やるとなぜか、好きな男の子ではなくて、それは昔長いこと付き合ってから別れぱったり連絡も取らなくなったあの人の顔になっている。

 

夢ってかなりめちゃくちゃなことが起こるのに、こういう時は、好きな男の子の肖像権に配慮がされるようだ。

こうやって元彼の夢を見る度そこに寓話性というか啓示的な意味を読み取ろうとしていたけど、ただ、私が人を愛していた時の記憶が借り物として蘇っているだけで、元彼の顔かたちは舞台装置でしかないんだろう。きっと。というかそう思いたい。